日本航空・JAL(本文中には会社名は明示されていないが、この会社とわかる)のキャビン・アテンダント(CA)さんを妻に持つ、コピーライターの旦那さんによるエッセイ「妻は、ただ今フライト中」。
この本は、出版されたのが1989年で、もう30年ほど前の本ではあるけど、結構面白い。
飛行機に搭乗するときに、お世話になるキャビン・アテンダント(CA)さん。(今は、フライト・アテンダントという呼び方になってしまいました)
海外へ頻繁に行き来でき、その華麗なる様子が、雑誌やメディア等で伝えられたりするけど、実際どうなのか?
そういう疑問に答えてくれる一冊。
「キャビン・アテンダント」は、なりたい職業としても人気があり、華やかなイメージもありますが、実は、
- 月の半分は家にいない。
- 仕事は重労働。成田=ニューヨーク路線などは13時間労働。家に帰り着くと、制服のままドドッと倒れ込み、そのまま眠りの深淵へ。
- 時差克服方法を持っているかどうかで、職業生命が決まる。それができない人は、ツラくて辞めていく。
- 休みの日は、フライトの疲れをとり、次のフライトにそなえて体力を再生産する。下手に遊んでしまうと、前のフライトの疲れが残ったまま、次のフライトに望むことになってしまうこともある。
- 休みの日も、欠員発生に備えて自宅待機などでスタンバイ。スタンバイの八時間は、一歩も外に出てはいけない。長風呂や長トイレもダメで、たとえ、急な雨で、旦那さんから、傘を持ってきてほしいとお願いされても、外出は一切ダメ。(*ケータイが普及する前の話だから、このへんは今は変わっているかもしれない。)
- スタンバイで呼びだしがかかると、行き先と集合時間、滞在日数を確認して、空港へ向かう。電話一本で世界中に飛んで行かされる出前のようなもの。
- アンカレッジ空港の名物「アラスカまんじゅう」。(*飛行機の航続能力が伸び、アンカレッジ空港を経由することが少なくなったので、今は別なものに変わっているかもしれない。)
などなど、その実態は、かなり過酷。
とくに、この本の中で印象的だったのは、以下の部分。
夫のぼくでさえ、ふだん着の妻とスチュワーデスの制服姿の妻とでは別人のように思えてしまう
(中略)
マンションの前で待っているタクシーに乗りこむときには、きりっとひきしまった完全なプロの顔になっている。
キャビン・アテンダント(CA)さんの仕事は、機内食やドリンクを供するときなどは「サービス要員」、緊急時などには乗客の安全を守る「保安要員」となります。 場面場面で、プロの職業としての態勢が求められる。
今まで、機内で見ていたのが、表の顔とすれば、この本を読むと、その裏の顔を知ったような感じです。実力派の舞台俳優が、その舞台裏で、日夜、必死に練習をしているような、そんなのに似た印象を受けます。
今度、飛行機に乗る時は、より一層の畏敬の姿勢で、客室乗務員さんに臨まないといけないと感じました。
なお、この「妻は、ただ今フライト中」という本は、たまたま、近所の図書館のリサイクル本(図書館で不要となった本を放出)の中に見つけました。
ちょっと古い本なので、新本での販売はされていないみたいです。
中古本として、amazonなどで、たまに「1円」で売られていたりします。
Have a good flight! ✈