国土交通省で、「空港別収支の試算結果について」という資料が出ていました。
最新は令和3年度のもので、その内容を見てみると、ちょっとビックリする内容でしたので、簡単にまとめてみました。
- 空港別収支の公表の対象空港
- 空港別収支の公表の対象事業
- 令和3年度の空港の航空系事業の損益状況
- 東京国際(=羽田空港)以外の空港は全て赤字
- EBITDAでも東京国際(=羽田空港)以外の空港は全て赤字
- 地方空港は存続できる?
空港別収支の公表の対象空港
対象空港は、国管理1の8空港。以下の地図の空港です。
ご覧いただくと違和感を感じる人もいるかと思います。
地図には「東京国際(羽田空港)」は入っているのに、「新千歳空港」「福岡空港」「伊丹空港」は含まれていません。
これらの空港は民間会社が運営しているため、この資料の対象にはなっていません。
空港別収支の公表の対象事業
資料では、以下の2つの事業での収支を公開しています。
- 航空系事業
空港整備に係る経費を費用に計上するとともに、純粋一般財源も含めた一般会計受入を収益に計上した損益に基づき算出し作成したもの - 非航空系事業
空港関連事業(旅客、貨物ターミナルビル事業者及び駐車場事業者)の損益を単純合算したものを基礎として算出し作成したもの
「航空系事業」が、飛行機の発着料や旅客の空港利用料などによる収入で、この記事では、この事業の収支を見ていきます。
令和3年度の空港の航空系事業の損益状況
令和3年度の状況は、こんな感じとなっています。
空港名 | 航空系事業の営業損益 |
---|---|
東京国際 | 5,391百万円 |
百 里 | △275百万円 |
美 保 | △321百万円 |
岩 国 | △344百万円 |
三 沢 | △440百万円 |
小 松 | △446百万円 |
丘 珠 | △454百万円 |
八 尾 | △496百万円 |
徳 島 | △512百万円 |
高 知 | △914百万円 |
松 山 | △1,159百万円 |
北九州 | △1,340百万円 |
鹿児島 | △1,560百万円 |
長 崎 | △1,912百万円 |
新 潟 | △2,029百万円 |
大 分 | △2,037百万円 |
宮 崎 | △2,728百万円 |
那 覇 | △13,858百万円 |
合 計 | △25,434百万円 |
東京国際(=羽田空港)以外の空港は全て赤字
東京国際(=羽田空港)以外、全て赤字となっています。全体での収支も赤字。
とくに「那覇空港」の赤字額は大きいです。おそらく、新滑走路建設の影響が大きいのではないでしょうか。
また、コロナ禍で、国内外の旅客数が少なく、飛行機の便数が大幅に減ったことが原因かもしれません。
試しに、コロナ禍前の平成30年度の収支状況を見てみると、黒字は「東京国際(=羽田空港)」「新千歳」(当時は国管理の空港)のみで、残りの空港は赤字でした。
「地方空港=赤字」というのは定着しているようです。
EBITDAでも東京国際(=羽田空港)以外の空港は全て赤字
「EBITDA」という、会計上の利益にいくつかの費用を足し引きして、実際の収益力を見る方法があります。そのEBITDAの利益金額を試算されたものが、資料に掲載されています。
それを見ると、「東京国際(=羽田空港)」の減価償却が大きく、その数値を戻すと、全体では利益となっています。
しかし、「東京国際(=羽田空港)」以外の空港は、依然として赤字ということには変わりません。
地方空港は存続できる?
この収支を見て思うのが「地方空港は存続できるのか?」ということ。一般の企業であれば、これだけ赤字が続くと、累損として積み上がり、事業運営に影響が出てきます。
この記事の最初の方にある日本地図を見ますと、年間利用客数は、「東京国際(=羽田空港)」は1000万人を超え、「鹿児島」と「那覇」が200-1000万人(このレンジは変では?)。残りの空港は、200万人未満となっています。細かい利用者数は、別の統計資料を見れば、わかると思いますが、そもそも収支トントンとなれるような利用者数は、どのぐらいなのでしょうか。
空港はインフラですので、国としては赤字でも整備するという意気込みでしょうが。
事業の採算をとるために、高速道路のように、いつか旅客者利用料などが値上げされてしまわないことを祈るばかりです。
その他詳しくは、国土交通省の「空港別収支」の資料をご覧ください。
Have a good flight✈